どうやらホラーゲームの世界に迷い込んでしまったようです
「夏生が、このゲームの参加者。そんな」





「言っとくけど、僕はつまらない嘘は嫌いなんだ。変に疑ったりしないでくれよ」




時間の無駄と言わんばかりに、手を挙げて首を横に振る影。




「というか、君さ。僕との状況把握出来てる割に随分冷静だね?」




「お前には、そう……見えるか?」




「少なくとも、今までのゲーム参加者の動揺っぷりから比較すれば、君はまるで経験者のように冷静だ」





影は表情を変えずに、いや、この会話の中で一番真剣な表情でそう言った。




「そりゃ、どうも。ついでに、他の参加者についても聞きたいところだけど」





「そりゃ、酷い動揺っぷりだった。あまりの恐怖に叫び散らす女子大生とか、生まれたての小鹿のように足が震えて走れない男子学生とかね」




僕は、そんな恐怖が今のところ植えつけられてないけど。




これから、そんな目に合うのか……?



夏生も、同じような目に。










「あぁ、別に僕の言い分を聞いてくれるなら、無茶な事はさせないよ」











「へ?」




「さっきまでのは自分の影と会話が成り立たなかったケースだからね。だから、何も教えずに強制鬼ごっこを開始して、今もどこかで逃げてるんじゃないかな」







今も、どこかで。








影は遠い目で僕の後ろを眺める。




僕も合わせて、同じように背後へ振りかえる。




『ダ ズ ゲ デ』




「うわぁぁ!!!」





背後には、顔半分が無くなってた女性が僕を覗きこんでいた。




「ひっ」




『アダラシイ コ オニゴッゴ ズル?』




「こ、この人は、鬼ごっこでこうなったのか?」




影に問いかける。




「そうだよ、自分の影に追いつかれたら体の一部が鬼のような形相になる。本来はね」




「本来は?」




「けど、本人と影との合意があればゲームのルールを変えることが出来るんだ。勿論、ルール違反をした場合は問答無用で影は殺しにかかるけどね」




影はさらっと答えるが、この女性はどんなゲームを提示したんだろう。




「あ、勘違いしないでね。この女はゲームのルールを、自分の影の存在を受け入れなかった、ルール違反の後者でこうなっているんだよ」




女性は、鬼のような形相で、尚死ぬに死ねないといったような絶望が感じられる。






「あ、あぁ……僕も、こうなる運命なのか?夏生も、酷い目にあっているのか?」






「それは、君次第だよ。星岡 明」





< 9 / 11 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop