吉田は猫である。
「き、聞いてたんですか…!」


いつになく吉田が弱々しい声を出すけど、それにかまわず「そうだよ!」と言ってやった。


「いつもはあーんなに不機嫌でクールぶってるくせにさ!猫にデレデレで!」


優しいくて温かい声だったことは言ってあげないけど。


「すーごい可愛かったんだから!」


吉田がなんの反論もしてこないのでどうしたのかと思って吉田の方を見ると吉田は猫を抱えながら真っ赤な顔をして俯いている。

抱きかかえられている猫も不思議そうににゃあと鳴いて吉田を覗き込む。


「吉田?」


呼びかけても反応なし。


「え、ちょ、待って、ごめん、吉田、そんなに嫌だった?ごめん、ちょっと言い過ぎたかもとは思ってたんだ、ごめん吉田、言わないから、私言いふらさないから、な、泣かないで」


慌てて吉田に近寄ろうとすると「やめてください!」と焦ったように吉田は言って顔をそむけた。


「…今、死にそうです」


吉田の顔はすごく赤かった。

まるでそう、りんごみたいに。

恥じらいの表情、合わない視線。


「可愛い…」


思わず口に出ていた。
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