黒騎士は敵国のワケあり王女を奪いたい
18.
三日後、フィリーは王城へ呼び出された。
城の中で一番大きな謁見の間で、ベルベットの絨毯の先に座するリチャードに頭を垂れる。
荘厳な扉は固く閉ざされ、敵国の王女のために招集された近衛連隊が壁を埋め尽くした。
王座のそばには、黒旗の騎士と名高いフリムランの英雄キール伯爵が、腰に剣を帯びて立っている。
「帰国の日取りが決まりました。十日後、ブライン砦にあなたの婚約者が迎えにきます。不自由な思いをさせましたね、フェリシティ王女殿下」
フィリーは低く膝を折ったまま、小さく息を吸い込んだ。
「とても親切にしていただきましたこと、心から感謝を申し上げます」
リチャードが頷き、片手で口もとを覆った。
「すでにギャロワ卿がブライン砦へ向かい、準備を進めています。あなたの婚約者はランピーニ侯爵の件を含め、ミネット側の安全の確保に努めると約束しましたが、護衛に黒旗騎士団を同行させるつもりです。キール伯爵、どうかな」
フィリーは静かに目を閉じる。
ギルバートが心臓に手を当て、頭を垂れた。
「すべてあなたに従います、我が国王陛下」