黒騎士は敵国のワケあり王女を奪いたい
第四章 海上の孤城
19.
約束の前日、ミネットの王女を輸送する国王軍はブライン砦に到着した。
砦の外には天幕が張られ、ミネット軍を出迎える準備が進められている。
天幕の向こう側には、東にある町から人々が詰めかけていた。
明日は町を出ないよう命令が下るはずだが、ドレバス卿が領地を召し上げられ、一時的にキール伯爵の管理下となった今、ギルバートへの歓迎を示してくれているのだろう。
ギルバートは馬丁に黒馬のマック・アン・フィルを預け、一ヶ月ぶりに砦の門をくぐった。
ブラインに残っていた騎士たちが集まってきて、敵国の王女の捕獲に端を発するドレバス卿の逮捕と、ギルバートの帰還を喜ぶ。
砦の部隊を取り仕切っていた参謀のハーヴェイが、ギルバートの肩を強く叩いた。
「うまくやったな、ギルバート。知らせを待つだけのこっちは、どうなることかと気を揉んだぞ」
ギルバートは小さく頷いた。
「手間を取らせた。お前たちの調査のおかげだ」
先に到着していたオスカーが、顎で門のほうを指す。
「で、どうするつもりなんだよ。手を打つんだろ。俺たちはなにをすればいい」
門の手前には王家の馬車が停まっていた。