黒騎士は敵国のワケあり王女を奪いたい

フィリーはギルバートの首に腕をまわし、執拗なキスに応えようとした。

ギルバートがフィリーの肘を掴み、上半身を離す。
嫌がるフィリーをからかうように笑った。

「ちょっと待ってくれ。俺も本気なんだ」

シャツを脱ぎ捨て、ベッドの外へ放り投げる。

フィリーは思わず目を見開いた。

ギルバートの肩は三角形に盛り上がり、太い鎖骨をはっきりと浮き上がらせている。
小さな傷が残る広い胸も、丸みを帯びたしなやかな腕も、明らかに硬く割れた腹も、フィリーは一度だって見たことがなかった。

ゴツゴツした人だとは思っていたけれど、こんなにたくさんの筋肉に覆われていたなんて!
月の光を浴びた男はまるで悪魔のように美しい。

ギルバートがフィリーに覆いかぶさり、顎に指をかける。

「怖くなったか? きみがなにを欲しがったか理解していなかったとしても、言い訳はさせない」

ギルバートは機嫌がよさそうだった。

フィリーの耳の下にキスをして、シーツに広がる髪を梳く。
たくましい太腿が薄いシュミーズの上からくすぐるように脚をかすめた。

触れ合う肌は心臓が飛び出るほど熱い。

フィリーは恐る恐るギルバートの肩に指を這わせた。

「どうしてあなたはこんなに硬いの」

ギルバートが興味深そうに眉を上げる。
真似をして、フィリーの肩を指でなぞった。

「きみは柔らかくなったな、シュガー。出会ったときは猫を拾ったかと思うほど軽かった」
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