黒騎士は敵国のワケあり王女を奪いたい

17.

カミラはフィリーの煤汚れをすべて落とすと、美しくカールする亜麻色の髪を丁寧に編み、時間をかけて上品に結い上げた。

繊細なレースの施されたアイボリーのジュープと、目の色に合わせた翠色のドレスを着て、ホワイトやピンクアーモンドのクリサンセマムに飾られたピエス・デストマを装着する。

フィリーを迎えにきたギルバートは一度だけ大きく頷いた。
それからカミラと慎重な議論を重ね、帽子や手袋や外套を選んでいく。

結局はほとんどギルバートの好みが採用され、外套を着れば見た目は真っ黒になってしまったので、カミラは少し不満そうにしていた。

ギルバートの前でくるりと一周してみせ、フィリーが肩を竦める。

「素敵な外套だけど、外出はできないんじゃないかしら。それとも陛下のところへ行くの?」

フィリーは謹慎を言い渡されていて、伯爵邸の周囲には国王軍の監視が潜んでいる。

ギルバートが騎士らしくフィリーの手をとり、いたずらっぽく口の端を上げた。

「俺は陛下に忠誠を誓っているが、きみを密通者の危険に晒したことについては少しばかり怒っている」

フランツとカミラに見送られ、ギルバートは正面玄関から堂々とフィリーを連れ出した。

国王がギルバートのことを悪党だと言ったのは、あながち的外れということでもないらしい。
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