ある日、ビルの中、王子様に囚われました。
「貴方はそんな無邪気と言いますか、馬鹿正直と言いますか……疑うことを知らないから苦労されたんじゃないですか?」
「えっと……?」
すっごい憐れまれてる?
若干呆れているようにも見える。
何か不味いことを言ってしまったのかな。
うろたえていると何故かため息まで吐かれてしまった。
「苦労はどうか分からないですが、でも苦労したってことは少しは自分は成長したって思える節々があったんだと思うことにします」
確かにお金はなかったけど、証券会社の事務に就職できたし、わるいことばっかりの人生だったわけでもない。
「ですが、たった今、貴方は自分では抗えない様な苦労をしてます。少しは危機感を持ってほしいですね」
「そうですよね。なんかもう大学に行けないかもしれないって時が最大の修羅場でして、お金が振って来ないかなって思ったりしたんですよ。だから今、遺産やら後継とかピンとこないんです」
「失礼ですが。地田虎斉の財産を少しでも貰えたら一生遊んで暮らせるかもしれないですよ」