ある日、ビルの中、王子様に囚われました。
更に食い下がると、天宮さんは目を細めて私を見る。
そして立ち上がって隣に来たと思うと、耳元まで屈んだ。
「今すぐ、貴方を自由にしてあげられます。俺ならば」
低く、耳の中で余韻を残して響く甘い声。
その声をもっと聴きたいと、金縛りのように身体が動かなくなった。
「天宮さんなら?」
「俺と結婚してくれませんか?」
それは突然のプロポーズだった。
前後の会話が全て意味を持たなくなる様な、脈絡もない言葉の羅列。
なのに、甘い声。
「もちろん、拒否権はありません」
しかも強制的。
「君も明良も、人を信用し過ぎでしょ。俺だって君と結婚したいからわざわざここに閉じ込めたというのに」
「閉じ込めた? さっきは争いに巻き込まれないようにって」
「此処に閉じ込められるならば方便です」
悪びれもせず言ったあと、強引に私の頬に手を触れ顔を自分の方へ向けさせた。
「結婚を承諾してくれるまで、ここから出しません」