ある日、ビルの中、王子様に囚われました。
「う、嘘です。それに、無理です。私貧乏だし、生まれてきた環境が違うし」
「じゃあ今からお互いを知っていこう」
――多分この時、私はきっと丸めこまれようとしていた。
突然現れた優しくてイケメンな彼に、悪魔と天使の羽が両方生えているのが見えたから。
甘い言葉で騙されそうになっていた。
こんな小娘に、ただでこんな素敵なホテルを提供するはずがないもんね。
「どうしても俺を好きになれないならば、ご両親と親族会議に参加されてください。ただ、着物ご両親の行いのせいで、歓迎なんて絶対にされません」
「……」
「俺ならば、そんなつまらないものから全て守ってあげますし、解決します」
自信満々に笑って見せる天宮さんは、どうしてだろう。
悪い人に見えない。
それどころか、その笑顔は信頼できそうに思えた。
「閉じ込めますね。今、この部屋より安全で安心できる世界はどこにもないのですから」