ある日、ビルの中、王子様に囚われました。
真っ赤になってしまったけど、それでも美味しいご飯から手は離れない。
そんな私に呆れるか、また哀れな目を向けられると思ったのだけど、天宮さんは寛大だった。
クスクスと口元を拳で押さえるように笑っている。
「俺もその料理を是非食べてみたいな」
「あ、天宮さんのお口に合うかどうか保障できませんので」
「それでも、君の料理ならこの店よりきっと美味しいよ」
こそっと私にだけ聞こえるように甘く囁く。
こんな美味しい料理が私のもやし料理に負けるはずないのに。
なのに私は耳まで真っ赤になってしまっていた。
「今夜、俺の家で料理を作ってくれないか?」
「え、ええっ。無理ですよ! 本当に私ってぱぱっと安上がりな料理しか作れないし」
「……料理が問題じゃないんだけどね」
「まだ何か問題があるんですか」
いや、天宮さんに比べたら欠陥だらけなのは分かるけど、安っぽいご飯以外に何が?
「俺の家に来るってことは、ビルから出るってことでしょ?」
「はい」
「つまり、そのまま今度は奥さんとして俺の部屋に閉じ込めちゃうよってこと」