ある日、ビルの中、王子様に囚われました。
私が貧乏なことをいいことに、美味しいものを与え続ける作戦ってことか。
それは効果あるけど。
店を出て、天宮さんの後ろを黙って着いていくだけの自分に首を傾げる。
エレベーターホールに到着してもなんだか落ち着かなかった。
でもそれは自分でも理由は分かっている。
「私、このままホテルに戻ってゴロゴロして、また夜良いもの食べるなんてできません」
「何故です?」
「働かざる者食うべからずです。兄に負担してもらった学費や、奨学金があった身でホテルでただゴロゴロしてるだけなんて、やっぱり贅沢過ぎてショック死してしまいそうです!」
「ショック死」
天宮さんは、私の発言を全く予想していなかったのか突然吹きだしてしまった。
綺麗だなって思ってたけど、こんな風に顔をくしゃくしゃにして笑う人なんだ。
ちょっと素敵。
「でも俺は君を閉じ込めておきたいんだ。守りために。君はどうしていの?」
笑いつかれた後、息を整えながら尋ねられた。
だから、私の意思はただ一つ。
「天宮さんとお祖父さんの会社のお手伝いをさせてください」