ある日、ビルの中、王子様に囚われました。
それはつまり、着替えたり準備をすれば連れて行って頂けるってことだよね。
嬉しくてまた一歩近づくと、ちょうどエレベータの中に二人とも入った。
そのままエレベーターは一階のエレベーターホールへ戻っていく。
「先に面倒なことは言っておきますけど、うちは投資顧問会社です。主に世界中のヘッジファンドの紹介、株や海外での総合管理口座の依頼管理、ベンチャー企業への助言等を行っています」
「……はい」
「俺が入社する前に、君の父親が株の助言と謳ってベンチャー企業の社長たちから代金を奪い、その代金を持って夜逃げ同然で会社から消えました」
「……はい!?」
「社長がその代金は全て立て替えましたが、危うくこの会社は倒産どころか犯罪者のせいで路頭に迷う所でした」
淡々と天宮さんは言っているが、私は父が私の学費を持って逃げた過去があるので心が思いだしてキリキリと痛みだす。
人様のお金までそんな風に扱ってたなんて。
「なので、どうしてもうちで働きたいのならば、ご両親の事は誰にも言わないでください。逆恨みされてしまう可能性があります」
それは怖い。
こくこくと頷くと、急に冷静になった天宮さんは数秒黙る。
そして、にやりと、本当に漫画のように綺麗な顔をにやりと歪ませた。
「そして会社の皆に俺の婚約者と紹介するのが条件です」