ある日、ビルの中、王子様に囚われました。


私の前に現れた、優しく笑うこの方は、実はものすごく腹黒い方なのかもしれない。

そう気付いた時にはもう遅かった。
だってランチを美味しく頂いてしまった後だったのだから。

「で、どうしますか? ホテルに戻るか婚約者としてオフィスに行くか」
「……やはり、お仕事の邪魔になるので」

断ろうとしたら一階に着いたはずなのにエレベーターが開かないので彼の指を見ると、閉ボタンをしっかり押されていた。

「あ、あの」

「もちろん、ランチ代を気にして下さる咲良さんですから、婚約者のふりぐらい簡単ですよね」

「……嘘はよくないのでは」

私が頷くまで開ける気がなさそうだったので恐る恐る言ってみるが、彼はただにこりと笑うだけだ。

「大丈夫ですよ。必ず貴方は本当に俺の婚約者になるので」

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