ある日、ビルの中、王子様に囚われました。
なので、せめて化粧や髪をセットしてちょっとでも待とう。
「……」
一日で世界がこんなにも目まぐるしく変わるとは思わなかった。
あんな素敵な人、今まで見たことない。
話し方、雰囲気、箸の持ち方一つ隙がない。
見たこともないけれど、おじいちゃんだって絶対あの天宮さんなら信用してると思う。
完璧すぎて、夢の中にいるみたい。
「咲良さん?」
あーあ。声まで完璧すぎて本当に王子様みたい。
「咲良さん? どうしたんですか?」
ぺたりと額に触れられて、ようやくベッドから起き上がった。
「驚きました。てっきり寝ぼけてるのか、俺を意図的に無視してるのか」
「か、考え事をしてたんですっ」
いつ部屋に入ってきたんだろう。
妄想してて気付かなかったなんて言えないので、咳払いして誤魔化しておいた。
「それで、明良に一応聞いていたんでサイズは間違いないと思うけど」
「サイズ?」
思わず聞き返した私に、何故か天宮さんの方がきょとんと不思議そうに首を傾げる。