ある日、ビルの中、王子様に囚われました。



「滞在用に買った洋服と靴、それとうちの会社の靴です。社員証は間に合わなかったけど、常に一緒に行動するから問題ないですよね」

積み重ねられた箱の壁と、クローゼットにかけられていく洋服。
それは、私みたいな一般庶民には何着も買えないようなブランド品ばかりで青ざめてしまう。

「私の何カ月分の給料が飛ぶんだろう」
「俺からのプレゼントですから気にしないで」

「む、無理です!」

渡された会社の制服だろうか。
こっちはピンクのラインが入った黒のワンピースにピンクのスカーフを首に巻くのかな。

大人っぽいのに、さり気無いピンクの入れ方が可愛い。うわあ……身体のラインに沿ってフィットしててすごく素敵だ。

着てみたい、けど。
でもやっぱこんなに高いのは。

「あ、ご安心を。制服やこの洋服等は社長の意思です」
「お祖父ちゃんがそう言ったの?」

訝しげに尋ねると、笑顔を崩さずに頷かれてしまった。

信じがたいけれど、天宮さんからじゃないなら……。

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