ある日、ビルの中、王子様に囚われました。
「短大時代、皆がおしゃれしたり合コン行ったり、海外旅行行ったりしてる中、私は一人黙々とバイトしてました。友達を羨ましいって思う気持ちは全くなかったわけじゃないんですよ。でも、兄の負担にもなりたくなかったし、金額も不安だったし」
肌に通した可愛らしい服。
淡いピンク色のスーツ。スカートも甘めでハイヒールのかかと部分にピンク色のリボンもついている。
婚約者として挨拶するのだから、これぐらいの服装がいいのかもしれない。
頭の先からつま先まで揃えたブランドに、心臓がばくばくしていても。
「でもやっぱり、こんな風な洋服やビルは身分不相応かな。もう少し自分に自信が持てるようになってから来るべきでした」
「その時に、社長に会えなくても、ですか?」
辛辣な言葉に、手に汗がジワリと浮かぶ。
私の小さなプライドや見栄で葛藤している間に、会ったこともない祖父がいなくなる。
そう考えたらちょっとだけ寂しくなった。
「貴方は自分を過小評価しているけど、奨学金も努力して返したし、もやし云々と家庭的だし経済観念もしっかりしてるし、……前向きで礼儀正しく曲がった考えもなく擦れてない」