ある日、ビルの中、王子様に囚われました。
「どうして、今まで教えてくれなかったの」
「だからたった今説明しただろ」
「だからってこんな、具合の悪い時に会うのは嫌。私に知らせてくれたって良かったじゃない。自立しなきゃいけない時期だったかもしれないけど、私はお金に関しては誰にも頼るつもりなんてなかった」
今、自分にお祖父ちゃんがいたと喜ぶ暇もなく怒涛の様な展開が繰り広げられて、感情が追いついていない。
もう少し、情報だけでもあれば違ったかもしれないのに。
「それは悪かった。だけど、今、現実は深刻なんだよ。財産放棄した俺じゃなく、親はお前をあの会議に引きずり出そうとするから。だからここが安全だろ」
「……お兄ちゃんは天宮さんを信用してるの?」
「もちろん」
即答したお兄ちゃんの目に迷いはなかった。
「あいつは、信用出来るし頭も良い。その上、――お前の事を大切に思ってくれるはずだから」
その言葉に頬が熱くなる。
お兄ちゃんは、わ、私が彼に拒否権の無いプロポーズをされたことを知ってるのだろうか。
もし言って知らなかったら墓穴を掘りそうだし言えない。
けど、お兄ちゃんしか今、この状況を説明してくれる人はいない。