ある日、ビルの中、王子様に囚われました。
「祖父の件や親の事、はたまた会議の事とか今まで教えられなくて悪かったな」
頭をポンポンと撫でられて、どうしていいのか分からず戸惑う。
「あの、お兄ちゃん、いっぱい聞きたいことがあるんだけど」
「うん?」
ちょうど社長室に到着し、中に入りながらお兄ちゃんが私を覗きこんでくれた。
中に入ると、保冷剤を頭に当てるように黒岩さんが簡易処置をしてくれてソファへと促してくれる。
天宮さんの事、色々聞いてみたい。
それにお祖父さんのことも。
でもどれから、どう上手く聞けばいいのか悩んでいた。
するとドアの前で立ち尽していた私の後ろから、カツカツと慌ただしく革靴の音が近づいてくる。
振り返るよりも早く、肩を抱かれた。
「咲良さん、大丈夫でしたか?」