ある日、ビルの中、王子様に囚われました。
「まあ、暫くはここで甘えさせて貰えばいいよ」
「お兄ちゃんは?」
「俺はビジネスホテル。こんな高級なホテルに何日も泊まれねえよ」
染みついた生活習慣は変えられないからな、とひとしきり笑った後スッとンmvh真面目な顔になって私を見つめる。
「だから、こんな場所で守ってもらえてお前は本当に特別なんだ」
「と、特別」
会った瞬間から、私の事をお姫様のように扱ってくれる人だった。
「で、も、なんで私にここまでしてくれるの?」
本人に聞かないといけない言葉を兄に投げる。
すると、兄の目が一瞬だけ悲しげに窄められたのを見逃せなかった。
「本人にちゃんと聞け」
「そんな身も蓋もない言い方しなくても」
確かにお兄ちゃんに聞こうとした自分は卑怯だったかもしれないけど、私以上に苦労してきたお兄ちゃんなら分かると思った。
「自分で聞いて、何を信じるか考えろ。今から祖父の会社の関係で色々と嫌な現実や、嘘偽りが見えてくるかもしれない。それでも、真実をちゃんと見分けられるように」