ある日、ビルの中、王子様に囚われました。


お兄ちゃんは先に祖父を見つけた時に、それを経験済みなんだ。
だから私に、成長してほしくて厳しい言い方をしているけど、天宮さんと同じく甘やかしてくれているのは一緒ってことか。

「分かった。これは私の問題でもあるしね」

「そうだ。で、さっさとメシ喰って寝ろ。しんどい」

「あ。上着、ハンガーにかけるよ」

クローゼットを開けてハンガーを取り出すと、お兄ちゃんがゴホッとむせるのが聞こえた。

「どうしたの?」

「いや、それ全部どうしたのかなって」

クローゼットの中に塔のように積み重なってある箱や、かけられたハンガーの服を見て唖然としていた。

「え、あの、その」

「いや、聞かない事にする」
それ以上何も言うなと言うと、口いっぱいにお弁当を頬張って視線を逸らされた。

私だって、溢れたクローゼットのプレゼントに困惑してる。

それでもそれよりも、クローゼットではきっと足りない。溢れてきてしまう私の気持ちに一番戸惑ってるんだよ。
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