ある日、ビルの中、王子様に囚われました。
「ーーっ」
意味深な言葉に頬が熱くなったけど、すぐに誤魔化されてしまった。
「どうぞ」
降りるように、開ボタンを押してくれている彼の横を通り抜ける。
ホテルの45階は、真っ赤な絨毯が一面に敷かれ、絵画が飾られた廊下にクラッシックなBGMが流れている静か高級感漂う階だった。
「咲良さん、詳しい説明は部屋に入ってからで大丈夫ですね?」
一番奥の部屋に案内されながら、私が頷く。
するとフッと小馬鹿にされた様な笑いが聞こえた気がして彼の顔を見上げるが、最初と同様に優しい笑顔だった。
カードキーで部屋を開ければ、澄み切った空と数々とビルを見下ろせる絶景に、お姫様みたいな天蓋付きのベッドが置かれていた。
バスローブまで可愛らしいピンク色。
バスを覗けば、可愛いバスタブのお風呂。
おまけにアンティークのドレッサーは三枚鏡だし。
まるで女性専用だと言わんばかりに可愛らしい部屋だった。
「咲良さん、申し遅れましたが俺の名刺です」
鞄を置いた彼が、胸ポケットから取り出した銀色の名刺入れを見て、私も慌てて自分の名刺を取り出した。