ある日、ビルの中、王子様に囚われました。
「バイト先でどんなに忙しくても、どんなに大変な仕事でも笑顔で仕事していた君を見た。その後、明良と会った時も全く同じ笑顔だった。そんな君が可愛らしいと思ったし、危ういから手を差し伸べたいと思ってた」
息を飲む、飲む込まれる、奪われる、思考が。
ぐるぐると思考が回って、吐きそうなほど緊張していた。
何を言ってるのか、頭では分かってるのにどんな表情をしていいのか軽くパニック状態だった。
「でも、それは俺の驕りだった。君は本当に手を差し出して貰いたいときでも一人で頑張っていたんだよね。もう君は頑張ったと思うよ」
――俺に守らせてよ。
ふわりと包み込まれ、私のバッグが地面に落ちて行く。
引き寄せられて、抱きしめられて、私に甘えていいと初めて言ってくれた人。
もう自分にも隠せない。私はこの人がきっと好きだ。
余りにも不釣り合いなこの人に。
「君は、俺に子のホテルに囚われたと思っているかもしれないけど、ちがう。最初に君の笑顔に囚われたのは、俺の方だから」
「天宮さん、私、そのっ。私は駄目です。天宮さんの仕事の邪魔になってしまうから」
身体を捩って幸せから逃げようとしたけれど、天宮さんも離そうとしなかった。
「だから、それが解決したんですよ」
エレベーターが小さく音を響かせて34階の扉を開いた。
「解決したって?」