ある日、ビルの中、王子様に囚われました。
苦笑したお祖父さんに、天宮さんは眼鏡を上げながら得げに笑う。
「ふるったら、何も残らない。小麦粉よりも軽く中身のない方々ばかりでしたね」
「ああ。今回の事ではっきり分かった。私の財産は親族にピタ一文やらんと」
お祖父さんの声が会議室の中を、重く響いていく。
「身内の情は、会社の足を引っ張る。それは息子の件で散々理解していたつもりだったのだがな」
悲しそうに下を向いた後、すぐに顔を上げ親族の方をみた。
「手続きは、今回の証拠を記録に残してくれていた新澤弁護士に任せておく。法的な手続きをしておく」
お祖父さんの言葉に、誰も言い返せるものはいなかった。
おじいさんが一代で築き上げた会社の蜜を吸いたいだけで、何も利益は残さない人たちだ。
彼らが蜜を漁ったが最後、花は突き刺さった針でズタズタになる。
「私にもしも何かあれば、会社の権利は天宮副社長に引き継いでもらう。その引き継ぎもこの会議中によく頑張ってくれていた」
澄ました顔でお祖父さんは言いはなった後、控えていた黒岩さんと一緒に会議室から出て行った。
天宮さんは会議室の中で一礼すると、私の腕を再度引っ張って出て行く。