ある日、ビルの中、王子様に囚われました。
お茶目っけ全開でウインクするお祖父さんに、私は何度も何度もぽろぽろ泣きながら頷いた。
「……こ、こんなに幸せでいいんでしょうか。私、ここに来るまでもやしだけでも幸せを感じていたのに、今はもっともっと幸せで」
「ここが至上最高の幸せではありませんよ」
肩に置かれた温かい手に、顔を上に向けると天宮さんが私を蕩けんばかりの顔で見ていた。
「これで俺と貴方の間に障害もなくなりましたし、ここでなら逃げられませんよ」
片膝をつき、私の右手の甲に唇を這わせながら彼が言う。
「俺と結婚してくれますね」
それはプロポーズと言うには余りにも強引過ぎる言葉だった。
なのに、私は簡単に真っ赤になって涙目で視界をぼやかしていた。
「あの、あって間もないですしまずは交際から……」
「また閉じ込めたれたいんですか?」
にこやかに笑いつつも目は笑っていない。
本気だ。この人、本気なんだ。
「どうせ結婚するのですから、覚悟決めた方がいいですよ」
その言葉に、手を握ってくれる熱い感触に、私はゆっくり頷いたのだった。