ある日、ビルの中、王子様に囚われました。
「お見舞い……」
一瞬言葉を詰まらせた天宮さんに、私も血の気が引いた。
「そ、そんな、お見舞いにいけないほど容体が悪いんですね」
「いや、失礼。お見舞いは一日一時間、一組だけ許可されている。なので、いつも俺だけが行ってたから」
驚いている天宮さんに、首を傾げると優しい眼差しで私を見る。
「今、遺産や後継者争いをしている方たちは、お見舞いなんて一言も言わなかったので。社長を心配して下さったのは、貴方と明良だけです」
「お兄ちゃんも?」
「はい。それで、醜い会議に貴方を巻き込みたくないと、一人でしています。針の莚だとは思いますが、内孫は咲良さんと明良だけなので」
お兄ちゃんは私を守ってくれたんだ。
両親に学費を全て使われた時も、私の為に色々としてくれたもんね。
「それで、破門された貴方の父親が貴方を使ってその会議に参加しようとしたので、隔離させていただこうと」
「そうだったんですか。わあ、天宮さんとお兄ちゃんにはお礼を言っても足りないぐらいですね」
あはは、と力なく笑うと、今度は同情よりも憐れむ様な眼差しを向けられた。
「天宮さん?」