夢見日和〜会えない貴方に恋してる〜
碧斗のお母さんに、部屋へ上がらせてもらった。

ここで待っててー、とお母さんは私を碧斗の部屋のソファに座らせた。

「……碧斗の匂いする。」

こんな時に不謹慎かな。いや、いいか。
初めて上がるんだしね。

トタトタと階段を登る音が聞こえて
碧斗のお母さんはオレンジジュースを持ってきてくれた。

「わざわざごめんねー。きてくれて、碧斗もきっと喜んでる。」

お母さんは、か弱く微笑んだ。それがすごく寂しそうな笑顔で、私は涙が出そうだった。

「碧斗くんは…私のこと話してましたか?」

「ええ。綾乃ちゃんとお付き合いしてるってあの子が自分から言ってくれたのよ。」

「そう…でしたか。」

……碧斗の顔が浮かぶ。

「綾乃ちゃんは…碧斗のどこが好きだったのかしら?こんな時にごめんなさいね。ちょっと聞いてみたくて」

碧斗の…好きなところか。

「えくぼ…」

「えくぼ?」

「碧斗…笑うと右だけにえくぼができて。私、それを見るとすごく安心するんです。病気の間もずっと見せてくれていたんです。辛かったろうに…。そんなとこが、大好きなんです。」

お母さんは、今にも泣きだしそうな顔をしていた。
うんうんと頷きながら、私の話を黙って聞いてくれた。

「綾乃ちゃん。本当にありがとう…」

お母さんは顔を私に向けて頭を深く下げた。

「顔…上げてください。お母さん…」

ありがとう…なんて。私は何一つチカラになれなかったのに、どうして。
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