暗函
君、投げ出してはいけない。君はその世界に選ばれたのだ。私のような者は決して入れない世界だ。暗い道でも、終わりはある。
世間より見放された私から、一つ良い事を教えよう。君が今居る場所は、さっきの話でいう道の中間辺りだ。第一回目の迷いだ。打ち払え。大丈夫だ。君には私が見えずとも、私には君が鮮明に見えているのだ。例えこの迷いから抜け出しても、君には試練が待ち受けている。しかし、試練は君を強くする。決して君を殺したりはしないのだ。苦しい試練が、君の鎧となるのだ。立ち向かえ。負けてはならぬ。

こちらの世界は寂しいものだ。誰も私を必要とせず、誰の目に映ることも無い。毎日自己嫌悪に陥り、浴びるように酒を飲むのだ。それが、毎日続くのだ。試練さえも、神は与えてくれぬのだ。

君には、私のいる世界が魅力的に見えるかもしれない。試練に疲れた君にとって、試練の無い世界は天国のようであろう。しかし、そうでは無い。それは仮面だ。昔、君と同じ世界にいた私だからこそ分かるのだ。君のいる世界の方が、ずっと良い。
意地でもしがみついておかねばならない。こちらに来てしまっては、どれだけ嘆こうともう戻れないのだ。頑張れ。耐えろ。君には輝かしい未来が待っているのだから。
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