ヴァージンロード <続>Mysterious Lover
日本語も含めて、7か国語をスムーズに操るライアンが
一番得意だと自負するのは、フランス語でもイタリア語でもなく、この広東語だ。
北京語ならまだしも、なんで広東語なんだ?
出会ったばかりの頃聞いたら。
あいつの答えはこうだった。
「だってぼくの両親、中国人だから。広東省出身でね」
今日雨降るってさ。 みたいな自然なノリで返されて、オレは数秒間、言葉に詰まってしまった。
つまりは養子、ってことらしい。
世界には……ほんとにいろんなヤツがいる。
肌の色、国籍、言葉、宗教、すべてがバラバラなスタッフが行きかう、
モザイク国家の縮図みたいなオフィスを見渡して、オレはふうっと息をついた。
——奈央さんは、この街を気に入ってくれるだろうか?
やがて。
無事にデートの約束を取り付けたらしいライアンが、満足そうにこちらを振り返った。
「そうそう、父さんが……じゃなくて、ボスが、例のサポートの件タクミならしてやってもいいって」
「マジで!?」
ライアンは親指を立てると、「言っただろ。任せとけってさ」と、ニッと笑い、自分のブースに引っ込んだ。