ヴァージンロード <続>Mysterious Lover

だめだ、冷静になれ!
冷静に……

くそっ……なれるかよっ!
こぶしを握った時だった。


ぱんっ!


乾いた音が響いて。

新条が頬を押さえていた。
「な、奈央ちゃん?」

——え?


「ふざけないでください。わたし、こういう冗談、好きじゃありません」

新条へ、怒りに満ちた眼差しを残して。
奈央さんは駆けだした。

向かう先は……オレ?


ためらいながら手を差し出すと、腕の中に彼女が勢いよく飛び込んできて。
「拓巳っ……」

ぎゅうっとしがみついてくる奈央さんを、両腕で支えた。
日向に咲いた花のような香りが、オレを包み込む。
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