ヴァージンロード <続>Mysterious Lover
「あぁ……うん」
確か、前にそんな話をチラッと聞いたことがある。
「そしたらなんと、和馬さんのお父さんが理学療法士として勤めてるのも、同じ施設だったの」
奈央さんは言葉を切って、ふふっと微笑んだ。
「すごい偶然ですよねって話してて。そしたら最近になって、そのお父さんが……洋平さんって言うんだけど、和馬さんに相談してきたんだって。女性を初めて食事に誘う場合、どんな店がいいかって」
「え……」
「洋平さん、まだ和馬さんが小学生の頃に奥さまを亡くしてから、ずっと男手ひとつで和馬さんを育ててきた方で。だからね、ご本人曰く『恋愛の始め方すら忘れてしまった』らしいのね」
「あぁ。で、現役世代にレクチャー受けようって?」
「そうなの」
「でもさ、奈央さん……もしかして、その相手って……」
なんとなく話の道筋がオレにも見えてきて、そう聞くと。
奈央さんはうれしそうにうなずいた。
「和馬さんが聞きだしてくれた相手の特徴を総合すると、どうもそれ、うちのお母さんのことらしくて。わたしもお母さんに電話して、それとなく聞いてみたの。そしたら新条って名前出しただけで、もうおかしいくらい動揺しちゃって。あれは絶対、脈ありだと思う」