ヴァージンロード <続>Mysterious Lover
——え……?
それは。
何が起こったのかわからないほど、それは一瞬の出来事だった。
先生の姿が、ナイフの進行方向に、確かにあったはずの先生の姿が、
消えていた。
次の瞬間、先生の姿は工藤の背後にあって。
その手を後ろに捻りあげていた。
——う……つぅっ!
ナイフが音を立てて零れ落ち……
そのまま工藤は床にぐしゃりと押さえつけられた。
それはまるで、アクション映画さながらの鮮やかさだった。
——これは警告だ。この次2人に近づいたら、今度は二度と立ち上がれないようにしてやる。
いつもの穏やかな声音じゃなく
ビリビリと空気が振動するほどの、気迫をまとっていた。
——くっ……そ……ぉ!
親父が、国体出場経験もある空手の有段者であることをまだ知らなかったその時のオレの目には、先生の姿は、ただただヒーローに映った。
悪い奴をやっつけてくれる、最高にかっこいい、正義のヒーローに。