ヴァージンロード <続>Mysterious Lover

アパートの外に、パトカーのサイレンが響いた。

工藤を警察に引き渡し、ようやく静けさを取り戻した部屋で、
オレは先生に飛びついた。

——すごいや先生! どうやったの? ウルトラマンみたいにかっこよかったよ! ぼくも先生みたいに強くなれる? 教えてくれる?


——わかったわかった。教えてやるから、まずは怪我を見せなさい。血がでてるじゃないか。

口の中、それから頭のたんこぶ。
ケガを一通り見てくれた先生は、「これくらいならすぐ治るな」って笑うと、
その大きな暖かい手で、オレの頭をぐりぐりって撫でた。

——ママを守ろうとしたんだな。えらいぞ拓巳。ウルトラマンは、お前の方だな。

大好きな先生に褒めてもらえて。
オレは有頂天になっていた。

——先生、お腹すいてらっしゃるでしょう、すぐに用意しますね。
いそいそとキッチンに立つお袋の声に、先生は突然、『うわっ!』と叫んだ。

——先生?

オレが聞く間もなく、先生は部屋をバタバタと飛び出して、
すぐにしょんぼりしながら戻ってきた。

——ごめんな……拓巳。

アパートの前まで来て、物音と叫び声に気づいた先生は、
途中でオレへのプレゼントを落としたことに気づかず、
そのまま階段を駆けあがってきてしまったらしい。
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