ヴァージンロード <続>Mysterious Lover
その後にも何回か、あの誕生日と同じく、携帯が震えたことがあったけど、
オレはそのたび押入れに隠して、頃合いを見計らって、またカバンに戻しておいた。
ディスプレイには、毎回同じ名前が表示されてた」
両手を、白くなるほど握りしめていたことに気づいて、
必死に、指を伸ばした。
指先の感覚が、なくなっていた。
迷うな……!
心の中で、呪文のように唱える。
奈央さんと、一緒に歩いていきたいんだろう!?
オレはもう一度、感覚のない指を折り曲げた。
「……自分の犯した過ちに気づいたのは、高校生の時だった。
親父から奈央さんと香澄さんの話を聞いたことがあって。それでようやく思い出したんだ。オレが隠した携帯、そのディスプレイに表示されていた、あの難しい漢字が『香澄』だったことに。
電話はすべて……香澄さんからだったんだ」
震え続けていた携帯。
何かを、訴え続けていた携帯。
オレは、親父の目からそれを、遠ざけた。