ヴァージンロード <続>Mysterious Lover

香澄さんがかけた電話は、何回もつながることなく途切れ、
きっとそのせいで、
彼女は親父への不信感を強めていったんだろう。

あの誕生日の夜、最初にオレが携帯を隠さなかったら。
そんなことを思いつかなかったら。
香澄さんと親父の気持ちは、すれ違わなかったかもしれない。
お袋との関係は、医者と患者家族のままだったかもしれない。

やり直すきっかけだって、何度もあったはずだ。
でもそれすら、オレが摘み取ってしまったのかもしれない。

子どもの悪戯。
そんな言葉で片づけられるほど、それが軽い罪でないことくらい、
誰だってわかる。


オレは自分のことしか考えてなかった。

親父に、家族があったこと。
その不在に、涙してる人がいること。
命を絶とうとまで思いつめた人がいたこと。
オレは、ちらとも考えなかった。

「……全部、オレのせいなんだ。オレの……! オレが余計なことしなければ……もしかしたら……。本当に、ごめんなさい……! オレ……どう謝っていいのか……っ!」

オレは奈央さんに向かって、頭を下げた。下げ続けた。
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