ヴァージンロード <続>Mysterious Lover
その頬に、指でそっと触れた。
「…………っ」
くそっ……言葉が、出てこない。
オレの手に、奈央さんの手が、重なった。
温かな、手。
ぬくもりが、オレの全身を震わせる。
「ずっとね、怖かった。好きって口にすること。いつか、自分の気持ちが変わってしまったら、相手を傷つけてしまうんじゃないかって思ったから。……でもね、拓巳に出会ってから、今まで知らなかった自分をたくさん見つけて。あぁわたし、もう昔のわたしじゃないんだな、変わったんだなって感じて。それでね、思ったの。変わることって、悪いことばかりじゃないのかもって。つらいこともあるけど、それと同じくらい素敵なこともたくさんあるんだなって。それは全部、拓巳が教えてくれたこと。拓巳が、わたしを変えたの」
言葉が、途切れた。
2つの視線が……絡み合い。
「拓巳じゃなきゃ……ダメなの」
眼差しに、熱がこもる。
「だから……お願い。拓巳のものに、して?」
ひたむきに、オレを見つめる潤んだ瞳。
喘ぐように、わずかに開いた無防備な唇。
瞬間。
耳元で、何かがぶつりと、千切れる音が聞こえた。
獣が鎖を引きちぎった、そんな音だった。