ヴァージンロード <続>Mysterious Lover

◇◇◇◇
名古屋駅に到着後、地下鉄へ乗り換えたオレたちは、新瑞橋、という駅で降りた。
見慣れないこの地名は、あらたまばし、と読むらしい。

そこからさらに歩いて……着いたのは、
川沿いに建つ、レトロな雰囲気の低層マンションだった。

「はいはい、いらっしゃい! 待ってたのよ」

ドアの向こう、ぴんと背筋を伸ばした、美しい女性が立っていた。
聞いていた年齢よりずっと若々しく見える。
どこのパーツが、というわけじゃないけど、全体の柔らかな雰囲気が、
やっぱり奈央さんによく似てるな。

「あらまあ、イケメンねー! 奈央って面食いだったのね」

目尻を下げて笑う香澄さんを見つめながら、
オレはごくっと息をのんだ。

「はじめまして。奈央さんとお付き合いさせていただいてます、吾妻拓巳と言います」

一瞬の間。

それから、
「……吾妻さん、ておっしゃるのね。奈央ったら名前も教えてくれなくて。……どうも、奈央の母の香澄です」
わずかに笑みがこわばったように見えたのは、気のせいじゃないはずだ。
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