ヴァージンロード <続>Mysterious Lover
香澄さんは頷いた。
「自分じゃたぶん気づいてなかっただろうけど。私があんな馬鹿な真似したせいでしょうね。あの事件以降、あなた、他人との間に微妙に距離をとるようになった。他人に、決して心の中まで踏み込ませないように、壁を作るようになった。きっと、好きになった相手に、裏切られることが怖くなってしまったんでしょうね。……私、本当に後悔した。小さな娘の心に負わせてしまった、大きな傷に気づいたから。このまま一生、あなたが誰も愛することができなかったら……それは私のせいだって思ってた」
「お母さん……」
うつむいた奈央さんの横顔にかかった髪を、そっとかきあげると
涙を浮かべた瞳が、オレを見上げた。
うわ……
香澄さんの前だっていうのに、
こんな時だっていうのに、
オレの鼓動は、あっという間に弾んでしまう。
破壊力ハンパないんだよな、この目……。
密かに悶絶するオレに気づかず、香澄さんは話し続ける。
「だからね、本当に、うれしいのよ。愛して、愛されて……あなたがそんな相手に巡り合えたこと。それが拓巳くんだっていうのは、驚いたけれど。でも……同時にね、妙に納得してる自分もいるの」
「納得……ですか?」