ヴァージンロード <続>Mysterious Lover
香澄さんは、「そうよ」って頷いた。
「奈央の過去に関わる、不思議な縁でつながった拓巳くんだからこそ、奈央の心の壁を、壊せたんだなって。2人が出会って恋をしたのは、きっと……必然、なのね。だからきっと、あなたたちならできるわね」
「え?」
「病める時も、健やかなる時も、死が二人を分かつまで……添い遂げることが」
途端、奈央さんが顔を真っ赤にして首と手とを振った。
「お、お母さんッ気が早いってば! わたしたち、別にまだ結婚とかっそんな……」
「あら、そうなの?」
フライングしちゃったかしら……と、両手を口にあてて茶目っ気たっぷりに驚く香澄さんに、思わず笑ってしまいながら。
「フライングじゃありませんよ」と、オレはコートのポケットの中から小さなコバルトブルーのケースを取り出して、奈央さんの手に乗せた。
「え……?」
「今日、香澄さんに許してもらえたら、香澄さんの前でこれ、渡そうと思ってたから」
香澄さんに聞いてほしくて。オレの、言葉を。
奈央さんはオレとケースとを交互に見て。
おそるおそる、ふたを開けた。