ヴァージンロード <続>Mysterious Lover

思った通り。
それは、彼女の指に吸いこまれるようにピタリと収まった。

「私が……証人てわけね」
目を真っ赤にしてこくこく頷いた香澄さんは、オレにまた頭を下げる。
「拓巳くん、奈央のこと、よろしくお願いします」

「はい」
しっかりと、頷いた。

「拓巳……」
オレを見上げて泣き笑うその瞳に、笑みを返す。

そう、それは。
一生に一度きりの、ものすごく感動的なシーン……

なのに。

真面目さを装っていたその時のオレが、実は
彼女を押し倒したい欲求と必死で戦い、
理性を総動員して、我慢だ、我慢しろオレ!
とお経のように唱えていたことは……永遠に内緒ってことにしておこう。

夜景の見えるホテルのレストランでプロポーズ、ってシチュエーションが推奨されるのはそういう理由か!
なんて妙なことを考えていたことも……。
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