ヴァージンロード <続>Mysterious Lover
笑いながら。
奈央さんの左手を持ち上げて、そっとリングに口づける。
まるで、ずっと昔からその場所を知っていたように、
澄んだ光を放つ、そのリングに。
「あらあら、お邪魔だったかしら」
からかうような声がして、オレたちはパッと手を放した。
香澄さんはクスクス笑いながら、ケーキの箱をテーブルに置く。
「お好きなの、選んでね」
箱の中には、色とりどりのケーキが、ぎっしり詰まっていた。
「お母さん、買いすぎ……」
呆れたような奈央さんに、香澄さんは口をとがらせる。
「だって、拓巳くんがどういうの好きかわからないじゃないの」
でも箱を覗き込んだ奈央さんは。
「あ、よかったね拓巳、チーズケーキあるわよ」
「ん。ありがと」
迷うことなく、オレのためにチーズケーキをチョイスしてくれる。
「あらま、以心伝心てわけ? じゃあお母さんは、モンブランね♪」
「あぁっ! わたしがモンブランにしようと思ったのに!」
「ダメよぉお母さんがモンブラン♪」