ヴァージンロード <続>Mysterious Lover
「ええっ普通娘に譲るでしょ!?」
「お母さんが自分で食べようと思って買ったんだもん」
「ええっ!? 何よそれ〜!」
ぷんぷん頬を膨らませる奈央さんに構わず、香澄さんはすまし顔で
コーヒーをカップに注ぎ始めた。
「拓巳くん、ミルクは?」
「あ、多めでお願いします」
そう返事したオレに、奈央さんが箱から視線を上げた。
「そういえば拓巳って、カフェオレ好きよね。ブラックとか飲みそうなのに」
不思議そうなその顔を見ながら、密かに誓う。
どうしてオレが、カフェオレを飲むようになったのか。
チーズケーキ好きになったのか。
いつか話そう。
奈央さんは全然覚えてないだろうけど。
あの頃は、この片想いが実る日がくるなんて、考えたこともなかった。
彼女がオレの隣で、笑ってくれる日がくるなんて、想像もできなかった。
あきらめなくて、本当によかった。
人生って、本当に何が起こるかわからない。
だから、人は生きていくんだろう。
きっと、そういうことなんだ。