ヴァージンロード <続>Mysterious Lover

奈央さんの手の中、ドレスによく似合う、純白のブーケが視界に入る。
彼女と親しいスタイリストさんが手ずから作ってくれた、見事なウェディングブーケだ。

でもこれが、空中を舞うことはない。

「ブーケトス……しなくてもいいかな?」奈央さんが言っていた言葉を思い出す。

——投げずに……どうするの?

せっかく宮本さんが作ってくれたものだし、記念にとっておきたいんだろうか?
オレがそういうと、彼女は首を振った。

——式の後、直接渡したいなって。

だめ? そう聞く奈央さんに、今度はオレが首を振る番だ。
渡したい相手は、わかっていたから。

新婦側に並んで立つ、新条父子を見た。

近い将来、あいつをお義兄さんと呼ばなきゃならないんだろうな。
まだ多少、複雑な思いは残ってるけれど。
香澄さんの幸せのためだから。仕方ないよな。
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