ヴァージンロード <続>Mysterious Lover
だから、親父の辞書を借りようと書斎に入って
その手帳をデスクの上に見つけた時。
オレは吸い寄せられるようにそれを手に取っていた。
一体何を見てるんだろうって。
好奇心。ただ、それだけで。
手帳を何気なくパラパラめくって。
そこにはさまれていた、奈央さんの写真を見つけた。
<T大学入学式>と書かれた立て看板の横で笑う、一人の女性の写真。
目にした瞬間。息が……できなかった。
顔に、血がのぼるのがわかった。
——拓巳?
廊下から足音が近づいてきて、オレは手帳を慌てて戻した。
——辞書、見つかったの?
お袋の顔が、ドアからのぞいた。
——あ……うん。いや、その……もういい。
——ええっ?
お袋の傍をすり抜ける。早く、一人になりたかった。
——どうかした? 顔、赤いわよ。熱でもあるの?
追いかけてきた言葉に、さらに体温が上昇するのを感じた。
——そ……そう? 今日、暑いからじゃない?