ヴァージンロード <続>Mysterious Lover
もう、無理なんだろうか。
やっぱり、会えないんだろうか?
初めて、だったのに。
誰かに、こんなにも胸が騒ぐ想いを抱いたのは。
あきらめかけて、文学部棟の階段を下りていた時だった。
——ありがとうございましたぁ!
喧騒の中から、かすかに届いた声。
どくんっ……!
鼓動が、ひとりでに跳ね上がった。
声なんか、知らない。
写真でしか知らない、あの人なのに。
どうしてわかってしまったんだろう?
この、軽やかな優しい声は……
あの人だ。
頭のどこか、自分でも説明できない
予感めいた何かが、ささやいていた。
絶対。間違いないって。
オレの足は階段を駆け下り、1階の廊下へと走り出していた。