ヴァージンロード <続>Mysterious Lover
——いらっしゃいませー!
再び聞こえたあの声を頼りに教室を覗くと、そこは文芸サークル主催のカフェのようだった。
文豪の写真や有名な小説の一節なんかが展示された中に、
数卓のテーブルが用意されていて。
もう閉店間際のせいか、あるいは硬派な展示内容のせいか、
それほど客の姿は多くない。
そしてそこに……奈央さんが、メイド服を着て働く奈央さんが、いた。
あの人だ……
あの、人だ……
オレは、花に吸い寄せられるミツバチみたいに、
フラフラと、中に入った。
さらにラッキーなことに、奈央さん本人が「いらっしゃいませ! ご注文はお決まりですか?」なんて来てくれたものだから、
オレの鼓動はもう、相当ヤバイことになっていた。
本当に……本物だ。
彼女を見上げたまま、息ができなかった。
オレは、自分で言うのもアレだけど、昔から結構モテる方で
女子の扱いには慣れてるつもり……だったのに。
彼女の前では、そんなの何の役にも立たないってことがすぐにわかった。