ヴァージンロード <続>Mysterious Lover
年が明けた冬の日、
オレはついにとっておきのカードを、切ることにした。
それが……ハートのエースだと信じていたそれが、
ジョーカーであることに、まったく気づかないまま。
——あのさ、親父……オレ……見ちゃったんだよね、写真。
休日の昼下がり、リビングでテレビを観ていた親父に、話しかけた。
お袋は買い物に出かけて留守。
このチャンスを逃すわけにはいかない。
——写真?
オレをきょとんと見上げる親父に。
「奈央さんの」と続けると……その目がギョッと見開かれ、微動だにしなくなった。
——親父の娘、なんだよね? オレにとっては……姉貴、って呼んでもいいのかな。
—— ……。
——ごめん。最近親父、手帳広げてぼーっとしてるから、浮気でもしてんじゃないかって、ちょっと疑っちゃってさ。
——……なんだそれ。
親父の笑い声はかすれて、どこか弱々しかった。