ヴァージンロード <続>Mysterious Lover

まだ創設間もないにも関わらず、雑誌やテレビドラマとのコラボレーションで知名度をあげ、一気に火が付いたブランドなんだって、
奈央さんが説明してくれたことを思い出す。
「ここのアイテムって、普段使いしやすいものが多くて好きなのよね」って、
彼女も気に入ってたっけ。

奈央さんなら、どれが似合うだろう?
思わずウィンドーに見入っていると。

「あれえ?」って素っ頓狂な声が聞こえた。

視線を巡らせて、店の入り口に一人の中年男性を見つけた。

典型的なメタボ体型に、無精ひげ。
くたびれたジーンズとセーター……
あ、この人……


「高林……さん!?」

「亀井くん、だったよねえ」
ニコニコ、顔をほころばせて近づいてくるのは、確かに高林さんだった。
くだんの記事広告の撮影を担当した、カメラマンだ。

「お久しぶりです!」
頭を下げると、「久しぶりだねえ、亀井くん」と笑った。
そうだった。
あの時は、亀井拓巳って名乗ってたんだっけ。

「外国行っちゃったって聞いたけど、帰ってきたのかい?」
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