ヴァージンロード <続>Mysterious Lover
「バイト代も出すからさ」
オレは急いで首を振った。
「いえ、金なんていいですよ」
こんな素人でいいんだろうか? って一瞬迷ったけど……
どうせ奈央さんの仕事が終わるまで暇なんだし……やってみてもいいかも。
あの時の撮影現場は、本当に楽しかったし。
オレは「喜んで手伝います」と頷いた。
◇◇◇◇
それからまず、車から店内へ、機材運びが始まった。
1個ン十万単位するだろう高価なカメラが入った重たい鞄、
数々のレンズや脚立、照明機材、パソコン、今回はプリンターまで。
たった1回の撮影のために、こんなに持ち運ばなくちゃいけないなんて。
カメラマンて、相当体力勝負な仕事だな……。
オレが密かにぼやいていると。
「お疲れ様です、高林さん」
洋画の吹き替え声優かよ、ってくらい、やけに艶のある低音が響いた。
「どうもどうもー。またご指名いただきましてありがとうございますー」
顔をあげると、かっちりとスーツを着こなした上品そうな佇まいの男がこちらへ歩いてくるところだった。
「今回も無理なスケジュールをお願いしてしまって、申し訳ありません。お忙しいのに」