ヴァージンロード <続>Mysterious Lover

「いえいえー気にしないでください」

「あれ、こちらはアシスタントさん……ですか? いつもの方とは違いますね?」
切れ長の目がこちらを探るようにちらりと見た。

「あぁ彼は、急きょ手伝ってくれることになった知り合いで。あ、ほら中里さんもご存じの、沢木さんの恋人なんですよ」
高林さんが言うと、その男はわずかに目を開いて「あぁ……」と頷いた。

「噂の遠恋の彼ですか」

う、ウワサ? 噂になってるのか? オレたちって。

「初めまして。トワズ広報部の中里篤史です」
差し出された名刺を受け取って名前を確認する。
「あ、吾妻拓巳です」
挨拶しながら、オレは心の中で「この人が中里さんか」ってつぶやいた。

以前の撮影で、奈央さんが電話越しに交渉していた記憶はあるけど。
ジュエリーブランドの広報だし、女性だとばかり思ってた。
それがこんなに若い男だったなんて。
声はやけに落ち着いてるけど……20代後半、てところだろうか。

なんだか……オレを見る目がキツいように感じるのは気のせいか?

「……なるほど」
ふいに、その口から言葉が放たれた。
中里さんはオレを上から下までしっかり眺めると、「余裕なわけだ」
って、なんだか含みのある言い方をする。
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