ヴァージンロード <続>Mysterious Lover

こんなすごい人と、奈央さんは一緒の現場で、肩を並べて、
高みを目指して仕事をしてるんだ。
商品の良さを最大限引き出すために、純粋に努力を重ねて。

それが、あの人の勝負してる世界。

そんな彼女が、嘘をついて、浮気なんかするわけないじゃないか。
ましてや、仕事を隠れ蓑に使うなんて、ありえない。
何つまんない嫉妬とかしてんだよ……。

猛烈に自分が恥ずかしくなって。
オレは「片づけ、始めますね」って高林さんから顔をそむけた。

早く奈央さんに会いたかった。
会って、抱きしめて、キスして……それから。


時計を確認すると、8時過ぎ。
もう奈央さんの仕事も終わってるだろう。
そろそろ行った方がいいな。
機材を外へ運び出すため、慌ただしく店内を往復していた時だった。

ふと——
視界の端を、それがかすめた。

ショーケースの片隅、華やかなアイテムたちからぽつんと離れて。
申し訳なさそうに小さなスペースに収まったリング。

シンプルなプラチナのベースに、4粒の大きさの違うダイヤモンドが、流れ星みたいに連なって埋め込まれていた。
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